第壱章

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「えっ!?あ、ああ!!き、気にしなくていいわよ!!」 セラフの屈託のない笑顔を見て顔が熱くなるのを感じたレンは背中を向けてソファーに座る。セラフの顔立ちは整った中性的な顔立ちで、化粧をすれば女性と見間違えるだろうが、そこにやられたわけではない。 大地の牢獄で生活している者達は我先にと蒼空に上がりたがる為、他人を騙し蹴落とし、貶めるのが当然とされている。その為、心からの笑顔を向ける者も、向けられた事がある者もほとんどいない。 レンもセラフに笑顔を向けられるまで一度も心からの笑顔を向けられた事はなかった。そこに何の含みも打算もないセラフの笑顔にやられたのだ。 「なあ。名前は何ていうんだ?」 「えっ?ああ、そういえばまだ名乗ってなかったわね。私はレンよ、ギルドで依頼を請け負って生活してるの。見た感じセラフもギルド関係者でしょ?」 レンはセラフの格好と左目の下を横切る傷痕を見て自分と同じ職業だろうと予想した。
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