第弐章

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セラフの取った行動は人の道徳としては当然の行動だろう。しかし、大地の牢獄ではそれは『当然の行動』ではない。 自分がドルーデを倒していなくても証を持ってさえいればギルドはポイントをくれる。そういう闇市があるのも事実だし、何より他人から証を奪いレベルを上げる事を生業にしている人物も少なくない。 レンは昔、一度だけ自分よりレベルの低い魔術師から証を奪った事がある。一度だけとはいえ奪った事は事実で、セラフを見ていると自分が汚く見えて不安になるが、一緒にいて安心するのも事実なのだ。 二つの矛盾した感情を胸に秘め、レンは町に向けて歩いている。セラフはレンが話し掛けて来ないし、どこか話し掛けられる雰囲気ではないと思い声を掛けられないでいた。 無言のまま歩き続けるセラフとレンの間には、自然と気まずい空気が漂う。普通なら黙ったまま町まで戻ってしまうだろう。あくまでも『普通なら』だ。 「レン。どうかしたのか?悩みでもあるのか?」
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