第参章

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「今日は町の外を見て回れるんだな――」 人の手で等間隔に植えられた樹木に挟まれた遊歩道を全身に木漏れ日を浴びてセラフとレンは歩いている。それは心暖まる風景画の様な光景だった。 「何を暢気な事を言ってるのよ……町の外にはドルーデがいるのよ?ヘタしたらセラフなんて一撃で蒼空の楽園じゃなくて天然の楽園に逝く羽目になるわよ?」 レンは『少しは緊張感を持ちなさい』という意味合いを言葉に込めてセラフに言うが、どうやら伝わっていない様だ。セラフは組んだ両手で後頭部を押さえて夢見心地のまま歩いている。 「ダメだ……まるで聞こえてない」 レンは溜め息を吐いているが、セラフの大物なのか大馬鹿者なのかといった雰囲気に笑ってしまう。勿論、セラフの場合は後者である事に間違いはないのだろうが。 暫く朝の散歩といった感じで歩いていると、正面に見えている通りから賑やかな商人達の呼び込みの声が聞こえてくる。それはセラフとレンの目的地が近い事を教えていた。
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