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ある冬の日、東京都下の街。
日もとうに暮れ、立ち並ぶ家々からは夕餉の香しい匂いが漂い始める頃。駅前の交差点に立つ、歯医者や不動産屋等々が居を構える雑居ビルの、そこの急な角度の階段から、ぱたぱたと数人分の足音。すると、少女達が連立ってぞろぞろとドアを押して出て来た。
大体、皆十七歳前後くらいであろうか。皆一様に黒い髪の毛は登頂部より少し下でお団子に引っ詰めている。スカートを履いている子もいれば、ジーパンの子もいたが、誰もが共通して、脚が細く綺麗だった。
賑やかに談笑しながら歩く彼女達。暖かそうなダウンジャケットやウールのコートの襟をきゃあ寒い、とかき寄せ、ピンクや水色の鮮やかなトートバッグを振り回し、少し足早に駅前広場に向う。
そこには数台の車が止まっていた。お団子頭の少女達は、じゃあね、またね、と手を振り、それぞれがシルバーや黒の、ぴかぴかの車に乗り込む。
シルバーの、最近テレビCMで良く見る車の後部座席に座り込んだ少女に、運転席の40代後半程の女性が飲み物を渡した。助手席には、ルイ・ヴィトンのハンドバックがあった。
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