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森本バレエスタジオから、二駅分ほど離れた辺りの住宅街の、古ぼけたアパートの窓の明りが、一つ灯った。
201号室。表札には、「千羽」の素っ気無い文字。
友子は、2DKの部屋で、一人夕飯を食べていた。献立は、もやしの味噌炒めと麸の味噌汁、白米だ。それらを、友子はゆっくりと少しずつ食んでいた。
ゆっくり食べる事は食物の体内への吸収を穏やかにし、太りにくくなる。もやしはビタミンが豊富で食物繊維に富んでいるし、味噌の原料の大豆は優秀なタンパク源だ。味噌汁は、汗で失われた塩分を効率的に補給出来る。
しかし、友子にとってはそんな事はオマケでしかない。もやしは安い上にそこそこ腹が膨らむ。今は麦の値段が高く、パンなぞ買っていられない。味噌は、ただ単に好きなだけだ。そんなに高価な訳でもない。
もしゃもしゃと、薄茶色のもやしを噛みながら、友子は今日あった事を回想していた。
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