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「…そうか。君は私がアチリー代を返して貰いたいがために孤児院まで来たと思っているんだね?
…生憎、子供から一度渡したお金を巻き上げる、そんなみみっちい男ではないよ。」
ディックは肩を大きく揺らしてユエに向かって微笑んだ。
ユエはホッとしたのか、微笑み返し、今度は不思議そうにディックを見つめた。
「では何故、孤児院へ?」
後ろからドスドスと、女主人がこちらに向かう音が聞こえ始めた。
「後々に話をするよ。今は話せる状況じゃないからね。」
一瞬、視線をリリーの方へ向け、まるでユエが子供を静かにさせるときの動作と同じく、人差し指を口端に当て、ウインクした。
この動作が様になるお貴族様はやはり素敵な方だわ。
年が離れすぎているにも関わらずドキッとさせられたユエは密かに、ファンになろう、と誓った。
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