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細やかな雪。突き刺すような寒さで体が凍えてしまいそうな冬の聖夜の日。人通りが少ないにも関わらず、赤褐色の髪をした一人の少女が籠に寂れた景色とは反対の鮮やかな花を入れて街をウロウロとしている。
「こんな寒い中誰が花を買うのよ!!」
心からの悲痛の叫びは誰にも聞かれることもなく、音もなく降る雪に吸収され、虚しさだけが残る。帽子などというものを持っていないため、頭には雪が積もる。鼻の頭は赤くなって鼻水が出そうになる。
「はぁ…これ全部売らないとリリーさんにまたどやされる。」
手に持っている籠の中は数えると気が遠くなってしまいそうな程大量のアチリーの花がある。アチリーの花は聖夜のクリスマスの日に愛する恋人に渡すと一生離れることはないという昔から素敵なジンクスを持った花であった。
それも昔の話。最近じゃもう時代遅れ。
誰も買わないのに!!
ふと明かりがつきはじめた家の中を盗み見る。暖かそうな暖炉にクリスマスケーキやご馳走が並んだテーブル。それを囲むように笑顔の家族がいた。
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