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「この孤児院には新しい人を雇おうか。
今度は働くことも、暴力を受けることもないからね。」
ディックは優しい顔をして、うっすらと青アザが見えるユエの頬を撫でた。
いきなり触られて少し体を強ばらせてしまったのが恥ずかしくてうつむいたら、先ほど手に持たされた金貨の存在を思いだした。
「あ…あのっ!シュワルツ様、金貨をお返しいたします!」
「どうかディックと呼んでおくれ。シュワルツという名前はあまり好きじゃないんでね。
…それと、金貨はユエにあげたのだよ。雪が降ってるのに鼻の頭を赤くしながらアチリーの花を売っていた、頑張りやさんへのちょっとしたプレゼントだ。
だから貰っておくれ。」
優しい顔が少し困ったような顔になれば、ユエも断ることができなくなった。
あまりにも大金を持たされて、喜びたいところだが、後ろめたさが募る。
どうにかこうにか考えた後、ユエは思い付いた。
「とても嬉しいのですが…割りに合いません。
ですから……どうか私が出来る限りの恩返しをさせてくださいませんか?
えと、靴磨きとか!
えー…と、お掃除とかさせてくださいませんか?」
ユエはドキドキしながら言い終えて前を見たらディックは神妙な顔をしていた。
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