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ユエはそう言うとペコリとお辞儀をし、雪が積もっている道を走るように速く、その場を後にした。
「ディック様。お風邪を引きますよ。速く馬車にお戻りください。」
やれやれと振り返ると白髪の60歳を過ぎたお付き人ヒルテがディックのことを案じ、話しかけてきた。
ディック「ああ、分かったよ。途中で止めてすまない、ヒルテ。
…それと一つ、貴方に頼みごとをしてもいいか?」
「は。」
ディック「ここの地区の孤児院に向かってくれ。」
「御意。」
ヒルテは畏まって手を胸に当て、帽子をかぶりなおして、馬車にディックを乗せ、バタンとドアを閉めた。鞭を叩く音がして、馬車が動き出す。
ディックは先程のユエの言葉を思いだし、人に見られないようにクスリと笑い、呟いた。
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