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古い寂れた金属の取っ手に手を回したら、腐っている木の戸は嫌でも存在を示す程の音がする。
キキイ。
「リリーさん。ただいま戻りました…。」
それほど大きな音をたてさせたはずではないのに、真っ暗な廊下からドタドタと走ってくる音が聞こえる。
「ちゃんと全部売ってきたんだろうね!?アチリーの花一つでも持ってたら、追い出してやるんだから!!」
顔を真っ赤にさせながらユエに向かってくる40代後半の女主人。片手には年代物のウィスキーを持っている。本当はそんなものを買えるくらいのお金は持ちあわせていない。だからいつもこの女主人は国から孤児のために貰う金をかすめとって使っている。
もうなれた。どこもきっと同じだろう。
女主人はウィスキーを持っていないもう片方の手をユエにつきだした。その意味が分かっているので静かにその手に先程の売上金を乗せる。
「あぁ!!金貨じゃないか!!なんてきれいなんだ!!夢でも見てるのかしら!!」
手に取った金貨をいとおしそうにうっとりと眺める女主人。そのまま夢の中に行って帰ってくるなと思いつつユエは笑顔で言う。
「それではリリーさん、おやすみなさい。」
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