出会い

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毒島が温い生食(生理食塩水。無菌の0.9%食塩水。哺乳類の体液と浸透圧が同じ) を100ml注ぎ入れ、注射器で50ml吸引する。 洗浄液の入った注射器は外回りの看護師が病理部に急いで持っていく。 「メッツェン」 毒島は回腸末端を左手で持ち上げ、メッツェンバウム剪刀を受け取り、盲腸外側、壁側腹膜と腸管漿膜の間一センチ壁側腹膜よりを切開する。 そのまま盲腸下縁を回って回腸末端の後腹膜まで切り上げる。 手術場の電話が鳴る。 毒島が術野を離れて、電話のそばに行く。 外回り看護師が電話を取り、毒島の耳に当てる。 術者の手は清潔でなければならない。だから不潔野である、術野外の物を触れない。 手術場のインターコムから音声が流れる。高く綺麗な声。 「提出された腹腔内洗浄細胞診はパパニコロー染色で検鏡。がん細胞を検索するも認めず、CY0(陰性、がん細胞は無かった意)です。以上病理医桑田杏香」 「分かりました。ネガティブ(陰性)ですね。手術続行します」 外回りに電話を切らせ、術野に戻る。
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