3872人が本棚に入れています
本棚に追加
/179ページ
『明日の講義は、15時まで。
そのまま、まっすぐ病院に行こう』
そうすれば、きっと…こんなモヤモヤなんて、吹き飛んでいるはずだから。
----------
「…じゃあ、本日はここまで。
レポートの提出が済んでいない者は本日中にすること。
あとは…」
「…先生!
お先に失礼しますッ!」
「え?
ちょっ…
牧原さん?!」
講義終了後の小言を、最後まで聞く余裕などなかった。
周りの視線が痛いくらいだったけど…
それでも、『急がなきゃいけない』って、
「…芽衣チャン!」
「!
透く…、」
階段を凄まじい勢いで掛け降りていき、玄関の扉に衝突しそうになりながらも…
普段は履かないスニーカーの紐をきつく縛り、走りだそうとした…刹那。
激しいブレーキ音に次いで、聞き慣れた声。
「悠斗の所に行くんでしょう?
なら、乗ってください。
送りますよ」
「ありがと、透くん…!」
後部座席には、ちづちゃんもいた。
二人いわく、朝から上の空だったあたしを心配して、見張っていたらしい。
そしたら案の定、講義中に抜け出したりするから…
「まったく。
お前は本当に人の期待を裏切らないな」
「、えへへ…」
「ホントですよねぇ。
まぁ、芽衣チャンがいつも以上に元気だったり、いつも以上に落ち込んだりしていたら…理由の9割は、悠斗ですからね」
確かに、と付け足して、笑いを噛み締めるちづる。
その横顔を、少しうらめしそうに見つめて。
最初のコメントを投稿しよう!