第三話  未来へ

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「……ん?」  外回り中、たまに立ち寄る公園が何やら騒がしい。  いつもはあまり人影がなく、仕事をさぼるにはうってつけの場所なのだが、今日は遠目に見ても人垣ができている。 「何かあったか……いや、やめとこう。面倒なことには関わりたくないしな」  田坂はここのところ、かなり疲れを感じていた。  商品開発部から営業部に異動を命じられて三ヶ月。慣れない外回りに加え、今年の記録的な暑さは初秋を迎えても一向に収まらない。  流れ出る汗を拭いながら、ネクタイを少し緩める。  首元から熱い空気が入り込み、ますます不快指数が上昇する。  今日は公園の木陰で一息つく訳にはいかない。 「ふう……」  溜息を一つ吐き、下を向いてとぼとぼと歩く。  そこから徒歩で20分ほどの会社へ帰る途中、不意に冷たい風が一筋、田坂の目の前を通り過ぎた――気がした。  はっとして顔を上げると、左手に古びた家が見えた。  強い日差しを手で遮りよく見てみると、駄菓子屋の看板が小さく掲げられている。  半分だけ開けられた戸口から除く店内は薄暗く、並べられているはずの商品さえも見えない。 「……こんなところに駄菓子屋なんてあったっけ」  毎日とまではいかないが、よく通るこの道。あれば今まで気づかないはずは無いが、新しく建てられたとは到底思えない。 「ちょっと調べて、明日にでも行ってみるか」  田坂は鞄を左手に持ち替えて、少しだけ軽い足取りで会社へと向かった。
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