第三話  未来へ

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 店の奥、といっても入り口からさほど遠くはない。右側にある障子がゆっくりと開く。 「なにか、用ですかな?」  老人はそこから顔だけ覗かせて、またしてものんびりと言った。  店を構えていて、そこに人が来たら普通は客に決まっている。それなのに何か用かと言われて、田坂は戸惑った。 「あ……えっと――」  考えてみれば、自分は客ではない。しかしこの雰囲気、すぐには商談を切り出しにくかった。  老人は何も言わずに、田坂の次の言葉を待っている。 「えっと……あの……その……ら、ラムネください」  田坂は咄嗟に、レジの横のケースに入っているラムネを指差して言った。 「ラムネ、ね。はいよ」  老人は、年の割には身軽に店舗に降り立ち、よく冷えたラムネを一本取り出した。 「自分で開けるかね?」  そう言って、飲み口のビー玉を押し下げる蓋のようなものを田坂へと差し出した。 「あ……はい」  別に飲みたくもなかったが、昔やったことのある開け方には興味があった。  老人からラムネを受け取りカウンターに置き、飲み口にそれを押し当てる。  ポンっという軽快な音と共に、シュワシュワと泡の弾ける音が沸き立つ。と、見る見る中身が溢れ出し、田坂は急いでその瓶に口を当てた。 「兄ちゃん、下手くそだな」  カウンターを雑巾で拭きながら言う老人の声に苦笑しつつ、その懐かしい甘さを暫し楽しんだ。  半分飲んだところで、一旦手を止める。  瓶をカウンターに置き、濡れた手をハンカチで拭いながら、薄暗い店内を見回す。  目が慣れてきたのか、大体の様子は分かった。  狭い店内には、昔懐かしい駄菓子が整然と並べられている。  入って右手には木製のカウンターがあり、年代ものらしきレジスターが置いてある。  その奥は居住間だろうか、先ほど老人が出てきた部屋があるらしい。 「……で、何しに来たんだい?」
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