第三話  未来へ

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 キョロキョロと首を動かしていた田坂に、老人は改めて聞いた。 「あ……」  ラムネを買いにきたのではないことは、とっくにばれていた。  田坂は咳払いをして背筋を伸ばし、ポケットから名刺を取り出した。 「えっと、実は文房具の会社の営業で……」  そして、申し訳なさそうにその名刺を差し出した。 「なるほど、文房具ねぇ……うちに、ねぇ……」  予想通りの展開だったが、思いのほか田坂は落胆しなかった。 「無理、ですよねぇ……」 「まあな。大体、客なんて滅多に来ない」  老人は田坂に丸椅子に腰掛けるよう勧め、自分もラムネを開けた。  釣られるように田坂も残りを飲み干し、瓶を逆さまにした。 「このビー玉、子どもの頃どうしても取り出したくて、瓶割って母親に叱られたなあ」 「昔は瓶を返せば金がいくらか返ってきてたからな。そりゃ怒るだろうさ」 「金? そうだったんだ。最近のはプラスチックで、飲み口が外せてこれ取り出せるんですよね。なんか……昔のがよかったな」  外の陽に透かすように瓶を掲げて懐かしむ田坂に、老人はポツリと呟いた。 「兄ちゃん、昔に……戻りたいのか?」
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