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靴を履き、玄関の扉を開けるとそこには――あの、綺麗な七色のキャンディーをくれた男の子が立っていた。
「願いは叶った? それにしても、面白いお願いだったね」
男の子は楽しそうに声をあげて笑った。
「お願いって……まさか、あんパン――」
血の気が引いていくのがはっきりと分かった。
男の子はまだ笑っている。
「あ……あれは冗談だったのよ! 思い付きの作り話で……」
「一つだけ願いが叶うって、教えてあげたじゃない」
――そんな
「そっ、そんなキャンディーがあるわけないじゃないの!」
私が叫ぶと、男の子はきょとんとした顔で首を傾げた。
「……まだ信じてないの?」
その無邪気な声に、ゾッとした。
――もしそれが本当なら……
「そんな、どうしたら……あっ! キャンディー持ってたんだから、君なら何とかできるでしょ!? お願い! マコトを助けてよっ!」
「マコトって人、どうかしたの?」
私は、震える声で答えた。
「あんパン食べたのよ……それで、そのあとからマコトの周りでおかしなことが起こって……ねぇ、助けてよ! どうにかしてよ! 私……お願いだから!」
泣き崩れる私を見下ろして、男の子はニッコリ笑って言った。
「何言ってるの? アタリを食べたのは……お姉ちゃんのほうだよ」
(完)
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