106人が本棚に入れています
本棚に追加
「待った?」
公園の中ほど、木々に囲まれたベンチに座っていた奈緒は、背後からのその声に急いで立ち上がって振り向いた。
「あっ……う、ううん、全然! 呼び出してごめんね」
真一は、構わないよと微笑んだ。その柔らかな表情に、奈緒の鼓動は高まる。
「来てくれてありがとう」
真一と向き合い、頭を下げた奈緒は、なかなか視線を真一の靴から外すことができない。
「こちらこそ、お呼び出しありがとう」
笑いながら答えてくれたおかげで少しだけ緊張が解れて、ようやく顔を上げる。
その様子や、今日ここに来てくれたこと――きっと嫌われてはいないだろうという思いが、奈緒の背中を押した。
「あの……あのね、私……」
「ん?」
首を傾げる真一から目を逸らし、再び頭を下げて言った。
「私、ずっと真一くんのことが好きでした。私と……付き合ってください!」
言い切った奈緒の頭上からは何の返事も無く、風に揺れる木々のざわめきのみが耳に届く。
長い時間が経過したように、奈緒には感じた。しかし、実際にはほんの数秒間の沈黙だった。恥ずかしさで体が震え、涙が溢れ出しそうになった時、ふわりと空気が動いた。それと同時に「僕もずっと君のことが好きだったんだ。嬉しいよ」
という声が聞こえ、そっと体を引き寄せられた。
「え……」
奈緒は戸惑いながらもその言葉を反芻し、今度は喜びのあまりに体が震えて涙が流れた。
「呼び出された時、もしかしてと思ってたんだけど。女の子に告白させちゃったね。ごめんね」
真一の優しさに幸せが増し、奈緒はそっと体を預けその背中に腕を回す。
「ううん、ごめんなんて、そんな」
奈緒はようやく泣き止み、それにしても――と呟いた。
「……願いごと叶うって、本当だったのかもね」
「ん? なに?」
優しく抱きしめられたまま真一に聞かれ、奈緒は七色に光るキャンディーのことを話し始めた。
「ここに来る前、駄菓子屋さんの前で男の子に飴をもらったの。その時その子が、これは願いごとが何でも叶うキャンディーなんだって言ったの。嘘だって分かってたけど、思わず心の中で唱えて……それ叶っちゃったから、本当だったのかなって」
今でもそれを信じているわけではないが、なんとなく勇気をもらえて成功したような気がしていた。
「へえ……面白いことがあったんだね。で、願いゴトは何だったの?」
最初のコメントを投稿しよう!