第二話  永遠に  

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「待った?」  公園の中ほど、木々に囲まれたベンチに座っていた奈緒は、背後からのその声に急いで立ち上がって振り向いた。 「あっ……う、ううん、全然! 呼び出してごめんね」  真一は、構わないよと微笑んだ。その柔らかな表情に、奈緒の鼓動は高まる。 「来てくれてありがとう」  真一と向き合い、頭を下げた奈緒は、なかなか視線を真一の靴から外すことができない。 「こちらこそ、お呼び出しありがとう」  笑いながら答えてくれたおかげで少しだけ緊張が解れて、ようやく顔を上げる。  その様子や、今日ここに来てくれたこと――きっと嫌われてはいないだろうという思いが、奈緒の背中を押した。 「あの……あのね、私……」 「ん?」  首を傾げる真一から目を逸らし、再び頭を下げて言った。 「私、ずっと真一くんのことが好きでした。私と……付き合ってください!」  言い切った奈緒の頭上からは何の返事も無く、風に揺れる木々のざわめきのみが耳に届く。  長い時間が経過したように、奈緒には感じた。しかし、実際にはほんの数秒間の沈黙だった。恥ずかしさで体が震え、涙が溢れ出しそうになった時、ふわりと空気が動いた。それと同時に「僕もずっと君のことが好きだったんだ。嬉しいよ」 という声が聞こえ、そっと体を引き寄せられた。 「え……」  奈緒は戸惑いながらもその言葉を反芻し、今度は喜びのあまりに体が震えて涙が流れた。 「呼び出された時、もしかしてと思ってたんだけど。女の子に告白させちゃったね。ごめんね」  真一の優しさに幸せが増し、奈緒はそっと体を預けその背中に腕を回す。 「ううん、ごめんなんて、そんな」 奈緒はようやく泣き止み、それにしても――と呟いた。 「……願いごと叶うって、本当だったのかもね」 「ん? なに?」  優しく抱きしめられたまま真一に聞かれ、奈緒は七色に光るキャンディーのことを話し始めた。 「ここに来る前、駄菓子屋さんの前で男の子に飴をもらったの。その時その子が、これは願いごとが何でも叶うキャンディーなんだって言ったの。嘘だって分かってたけど、思わず心の中で唱えて……それ叶っちゃったから、本当だったのかなって」  今でもそれを信じているわけではないが、なんとなく勇気をもらえて成功したような気がしていた。 「へえ……面白いことがあったんだね。で、願いゴトは何だったの?」
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