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黒い猫は独りで生きていた。
寒い雪の降る夜、店の前を通った。
黒い猫はその店のガラスの向こう側から、悲しげにこちらを見る白い猫に気付いた。
真っ白い純粋な白。
二匹はしばらく見つめあった。
黒い猫は少しづつゆっくりと近づいた。まるで、音をたてると白い猫が何処かに行ってしまうと思ったように。
黒い猫は話かけた。
「こんばんは。」
白い猫は答えなかった。
「ガラスがあるから、聞こえないんだ。また会いに来ていい?」
それから黒い猫は毎日白い猫に会いに行った。
外は寒かったけれど黒い猫はそんなことなんか忘れてしまうくらい白い猫に会いたかった。ガラス越しだったが、毎日、毎日たくさんの話をした。
白い猫が答えてくれることはなかったけれど、それでも黒い猫は幸せだった。
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