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日は過ぎ次第に雪は溶け春がやってきた。
暖かい春の日、黒い猫は少し緊張しているようだった。
自分で摘み取った不細工な花束を白い猫に差し出し、そして、
「僕と結婚して下さい。」
差し出された花束のガラスの向こうで白い猫は微笑んでいる様に見えた。
幸せだった。これからもっと幸せになるはずだった。
しかし翌日、黒い猫が目にしたのはガラスの向こうに置かれた“OUT OF STOCK”(売り切れ)と書かれた紙だけ。
黒い猫には読めなかった。
白い猫は何処に行ったの?
黒い猫はそれからも毎日店へ向かった。
今日はいるかもしれない。明日こそは会えるかも。
プロポーズの日に送った花束はガラスの前で、水分が抜け干からびていた。
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