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黒い猫は毎夜、屋根に登るようになった。月に一番近いところで、月に願った。
白い猫に会わせて下さい。
風が強い夜も、雨が降る夜も、空腹で死にそうな時も、毎日、毎日。
そして、また、寒い季節がやってきた。
白い猫はいなかった。今日も黒い猫は屋根に登る。いつもより風が強く、小さな氷の粒が体に打ち付け、黒い猫の体力を奪う。屋根に登っても、月は厚い雲に覆われて見えなかった。それでも黒い猫は空に向かって願う。
白い猫に会いたい。
寒い夜、風と氷の粒が黒い猫の体温を下げる。
白い猫に会わせて。
今日は何時間願っただろうか。いつしか風はおさまり、氷の粒も止んでいた。
ぱぁっと明るくなったかと思うと、厚い雲の隙間から月の光が差し込んでいた。
その光は一つの線となって一ヶ所を照らしていた。
黒い猫はそれに気付いた。
その先に白い猫がいるの?
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