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「今、主犯格の2人が警官に連れて行かれます!」
数時間後。
マンションの前にはパトカー数台と、それを取り囲む様にマスコミと野次馬が溢れかえり、ちょっとした賑わいを見せていた。
最初にロビーに姿を現したのはあの男、佐川だった。
上着を頭からかぶっている所為で顔はよく見えない。
両腕を警官に掴まれ、手首には手錠がしてあるのか、衣服のような布が巻かれている。
「離せっ!痛てぇじゃねぇかっ!!」
佐川がパトカーに乗り込んで間も無い内に、今度はロビーからヒステリックな罵声が聞こえて来た。
佐川と同じ様に、両腕を警官に掴まれ、手首に布を巻き付けた母さんの姿。
暴れている所為で、顔を隠す為の上着は何の意味も持たなかった。
佐川とは別のパトカーの目の前に来た時、野次馬の最前列で事態を見つめていたボクと目が合う。
「彩・・・!お前の仕業だね!チクショウがっ!もう少しで出国の手続きも済んだっていうのにっ!」
母さんは目を見開き、物凄い形相でボクに向かって怒鳴りだした。
「お前の所為だっ!!さっさと薬漬けにしてやれば良かったよ!
どこまでアタシをどん底に突き落とせば気が済むんだっ!!」今にもこっちに飛びかかってきそうな母さんを警官は必死で抑え込み、パトカーへと押し込まれる。
「お前なんか・・・、お前なんか産まなければ良かった!この・・・疫病神めっ!!」
二人を乗せたパトカーが動き出し、離れていく。
ボクはそれを、ただ無表情に見つめ続けた。
そう、警察へと通報したのは、紛れも無くボク。
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