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和真に手を引かれて、瑛哉と遼が待っているアパートへと向かう。
火照った頬に、夜風が当たって心地良い。
「・・・冷えるな」
「ね」
いつもの様に会話が弾まず、言葉少なげに道を歩く。
「さっきは・・・、ごめんね。助けてくれたのに」
「別に、気にしてねぇよ」
和真はそれだけ答えると、煙草に火を付けた。
・・・和真の煙草は、マスターのとは違う匂いがする。
煙草なんてどれも同じだと思ってたけど、結構違うもんなんだな。
「・・・保護された女の子達、全員命に別状はないみたいなんだって。時間はかかるだろうけど、きちんと治療すればきっと良くなるよね」
ボクは、小さな声でそっと話し始めた。
「でもボクは、その子達を助けたかった訳でもないし、母さん達が悪い事をしてるのを止めたかったとか、そんな訳じゃないの。
・・・自分の中の母さんとあまりに違うあの人を、目の前から消したかっただけ」
遠くにいても、滅多に逢えなくても、絶えず自分の事を想ってくれている。
家族ってそういうものだと思ってたから。
あの後和真が巻いてくれたマフラーの中で、母さんに締められた首が痛みだし、少し息苦しくなった。
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