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「いい所に来た。煙草買って・・・」
ドサッ
マスターが言葉を言い終わらない内に、途中で買って来た大量の煙草を勢いよくカウンターに置いた。
「・・・こんなに買ってこいなんて言ってねぇぞ」
「どうせ後から買うんだから一緒じゃん。これだけあれば当分は買う必要もないでしょ」
「一ヶ月ももたねぇよ」
「ちょっとは煙草控えなよ」
「無理だね」
「あ、そう・・・」
早死にしても知らないから。
「あれ?珍しく仕事してると思えば・・・。久々だな、そのギター見るの」
椅子に腰掛けながら、マスターが手入れしていたギターが目に入った。
「弾かせて!」
「駄目に決まってんだろ。」
「ちぇ~・・・」
マスターに一蹴され、唇を尖らせる。
「そのギターだけは1度も弾かせてくれないんだもんなぁ」
「これは特別なんだよ」
「知ってるよ。だから弾きたいの。小さい頃から、ずっとそのギターに惹かれてるんだから」
ギターを見つめたまま言った。
いつもは店奥に閉まってあるそのギターは、多分マスターが若い頃に使っていた物なんだろう。
まるでヴァイオリンのような赤茶色のボディをしたそのギターは、何故か凄い魅力を感じる。
「お前に扱える代物じゃねぇよ」
「はいはい。修行しま~す」
マスターに背を向けて手を挙げた。
まぁ、予想していた答えなので。
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