夢に向かって

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夜の9時を回ったころ、残りの荷物を詰め込んだ大きな鞄とギターを持って立ち上がった。 最後に全ての部屋を見回し、電気を消して外に出る。 玄関の鍵をかけると、ポケットに入れておいた封筒の中に鍵を入れて封を閉じる。 そのまま封筒を手に持ったまま、雅司伯父さんの家へ向かった。 もう仕事から帰って来ているらしく、伯父さんの車が車庫に収まっている。 なるべく音を立てないように、そっと封筒を郵便受けへと入れた。 「お世話になりました」 明かりが付いている居間に向かって頭を下げ、その場を後にする。 瑛哉達の住んでいたアパート、優菜と遊んだ公園、マスターに連れられて行った土手、CROSS BEAT。 17年間の思い出全てを思い出すように、暗い中に映る景色1つ1つを見回しながら歩いた。 いつもは見慣れた平凡な風景が、今ばかりは愛おしく感じる。 きっと、もうここには戻って来る事は出来ないから・・・。 心に焼きつけるように丁寧に見て回り、駅へと向かった。
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