夢に向かって

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「マ・・・、マスター!?何でっ?」 「お前が俺に隠し事するなんてな、100年早いんだよ」 マスターは呆れたように溜め息をつくと、ボクの隣に腰掛けた。 店の外でマスターに逢うなんて、一体何年ぶり? あまりに予想外な出来事で、頭の中が大分混乱してきた。 「・・・止めに来たの?」 「止めて欲しいのかよ」 「・・・解んない」 隠したってマスターには通用しない。 正直に今の気持ちを言った。 「何だ今更。お前の夢は、こんなちっぽけなプレッシャーに折れる程の物だったのか?」 「・・・!」 マスターにそう聞かれて、ハッとした。 「答えろ、彩。お前の夢は何だ?」 そうだ・・・、そうだったね・・・。 「世界一のバンドで、世界一のギタリストになる事」 強い口調でハッキリとマスターに告げる。 小さな頃からずっと持ち続けている、ボクの夢・・・。 「単純な夢だな、相変わらず」 するとマスターは手に持っていた物をボクに向けた。 今まで混乱してて、その荷物の存在に気付かなかった。 これは・・・、ギターケース・・・? 「持ってけ」 「な・・・!だ、駄目だよ、受け取れないよ!」 慌てて首を横に振る。 「この先、あんなオンボロ1本でやっていける訳ねぇだろ」 「そ、それはそうだけど・・・」 「勘違いすんな。出世払いだ」 マスターはそう言うと、無理矢理ギターケースをボクに持たせた。
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