108人が本棚に入れています
本棚に追加
「マスター・・・」
「簡単に諦めて帰ってくんじゃねぇぞ」
「・・・うん!」
渡されたギターをしっかりと握り、強く頷いてみせた。
『まもなく、2番線に電車が入ります・・・』
構内にアナウンスが鳴り響き、電車がゆっくりと姿を現す。
「ほら、行け」
「うん」
ボクにはもう迷いは無かった。
簡単に帰ってくるなって事はさ、つまり・・・。
「・・・マスター!有難う!!」
動き出した電車から顔を出し、離れていくマスターに聞こえるように大きな声で言った。
もう改札へと歩いていたマスターは、振り向きもせず片手を挙げる。
距離はみるみる内に離れ、すぐに姿は見えなくなった。
窓を閉め、ギターケースを開けると青いボディの真新しいギターが姿を見せる。
「有難う・・・、マスター・・・」
何度言っても感謝しきれない。
絶対プロになって、またここに帰ってくる。
だって、此処には待ってくれてる人がいるんだから・・・。
最初のコメントを投稿しよう!