始まりを告げる出来事

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時が遡ること前日── 今日は待ちに待った高校の入学式。いつものように目覚まし時計に起こされ、いつものように歯を磨き、いつものように朝御飯を食べて、いつもとは違った新しい制服に身を包み清々しい朝を迎える…… 「いやだあぁぁぁーーーーーーーっ!!」 「奏ちゃん、待ってーーっ」 筈だったのに……清々しい所か、狭い家を全速力で逃げ回る慌ただしい朝になってしまった。 「くるなあぁぁぁーーーー」 「ちょっと……少しは待ちなさーい!!」 目覚まし時計に起こされ、歯を磨いた所まではいつも通り。 「ちっ……なかなか素早いわね……」 ただ、朝御飯の良い匂いにつられキッチンに行ったのが全ての間違いだった。 そこで待っていたのは、女神の顔を持った悪魔…… まるで、僕が来ることを予め知っていたように、義母(カア)さんは爽やかな笑顔を振り撒き、両手には真っ白な『何か』を拡げていた。 後は言うまでもないが、その瞬間から鬼ごっこが始まってしまった…… 廊下を素早く駆け抜け、足をフル回転に回しながら階段を駆け上がり、プロのランナー顔負けのコーナーテクニックを駆使し逃げ惑う。
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