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ドアノブに触れることなく、もの凄い勢いで扉が開き、見知った顔が飛び付いてきた。
真っ黒で艶やかなツインテールを靡かせ、幼い顔立ちとは裏腹に成長した体を持つ少女。
「つ、燕っ!?」
杏樹さんの実の娘であり、僕と同年代の義妹。『深那木 燕(ミナギ ツバメ)』が、僕に抱き付いて来た。
「う~ん……お兄ちゃん、今日もいい匂いだね~♪」
いつも着ている洋服とは違う、真っ白で純白な服に身を包んでいる燕は、相変わらず僕の匂いをかぐ。
この姿は他の誰にも見せられないな……
「それはいいから……離れてくれない?」
折角作ったチャンスを見す見す逃すわけにはいかない。どうにかして退かすしかないのだが、こうなった燕は満足してくれるまで離れてくれない。
「やだ」
案の定、僕の提案は却下され益々くっついてくる燕。
こう言った好意は嫌いではない。寧ろ、ここまで慕ってくれているのは素直に嬉しい。
だが、今だけはこの好意は嫌な感じしかしない。早くしないと、杏樹さんが散らばった写真を集めきってしまう。
そうなったら、逃げることは不可能になるだろう。
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