prologue

2/8
前へ
/73ページ
次へ
どうしてこんなことになったのか、僕自身、全然全くと言っていいほど理解出来ていない。 ただ一つ言えるのは、冬が開けたばかりでまだ肌寒い風が吹き続ける春。 満開に咲き誇る淡いピンク色の桜が宙を舞い、桜の木々から零れてくる暖かな春の木漏れ日が道端で倒れている僕達にゆっくりと降り注ぐ。 数分前まではこの桜に見取れながら、ポカポカと暖かな日差しを体に受けながら歩いていた筈なのに…… 気付けば、桜の花弁で一杯に埋め尽くされている道端に、空を見上げ倒れている。 木々の隙間から見える空は透き通る位にとても蒼く、それがより桜を引き立たせているように見えた。 「何が起きたの……?」 何故かは知らないが、頭がジンジンと痛み目眩がする。 その痛みを堪え、なんとか体を起こしてみる。 立ち上がることは出来なかったが、座るまでは大丈夫みたいだ。 「えっと……全く状況が分かんな──あれ?」 取り敢えず今の状況を把握しようと、辺りを見回した所で『何かがおかしい』と異変に気付いた。 僕は声変わりをしてはいるが、元々の声は他の男子と比べ高い方だ。しかし、今口に出した声ほど高くはない。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加