#02

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付けていたエプロンを外したと同時に、テーブルに置いていた携帯が鳴った。 ♪♪♪~ いつもの時間、いつものこの着信音は拓海のお迎えの合図。 急いで靴をはいて 弁当箱二つと鞄を持って家を出た。 『拓海、おはよう!』 表札の前に居る拓海がこちらを見て笑った。 いつもは陸もこうやってお迎えにきてくれるけど、朝練のある日は拓海と二人で学校へ行く。 『はい これ、朝ごはん。』 そう言って 出来立てでまだ温かいおにぎりの入った弁当箱を彼に手渡した。 『ん?何これ。』 ちょっと驚いてる拓海。 『おにぎり、早起きして作ったの。』 『お前が?』 『うん。』 『…明日 大雪だな。』 『そんな事言うならあげない!』 あまりに拓海がケラケラと腹を抱えながら笑うから ちょっとだけ怒ったフリしてさっきあげたばかりのおにぎりを奪いとった。 『冗談だって!』 でもおにぎりは簡単に拓海の元へ戻ってしまった。 『ありがとな』 そう言って私の頭を撫でる。 『…………っもう!』 こんな時だけお兄さんぶるから 妙に照れてしまうじゃん。 『すっげぇ 嬉しい。』 私があげたおにぎりを空に掲げながら 素直に嬉しそうにニコって笑ってこちらを見る。 私は拓海のこの大きな大きな笑顔が好きなんだ。 .
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