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未だざわついたままの教室。
席に腰を下ろした途端、『ぐ~』と、腹の虫が鳴りだした。
しかしその音は、ざわついた教室では響くことも無い。
ついさっき侑莉にもらった弁当箱を鞄から取り出して ほんの少し眺めた
。
侑莉の小さな背中と彼女にもらったそれが重なる。
丁度よく振り返った彼女は、俺の姿を見てキョトンとしていた。
弁当箱片手に何やってるの?とでも思ったのだろう。
そんな彼女に『いただきます。』と小さく言った。
一口ほうばって まだよく噛んでいないのに
『やっぱりしょっぱい?』
なんて眉を下げて心配そうに聞いてくるもんだから
わざとらしく咳込んで『うん、しょっぱい』って言ってからかってやった。
俺の言葉で更に悲しそうな顔をする侑莉。
その悲しげな顔があまりにも胸の奥にズキズキと響くもんだから 慌てて訂正をした。
『嘘!うまいよ。』
先程とは一変、嬉しそうに頬を染め 照れ臭そうにする侑莉があまりに印象的だった。
彼女を眺めているとこちらまで赤くなってしまう。
いつからこんな気持ちになったんだろうか。
いつから…
きっと いつどんなきっかけで彼女に恋をしたかなんて明確な理由は無くて
一緒に過ごしてきた中で、自然に侑莉の魅力にスーッと引き込まれるようにして
いつの間にか 拓海君に君を取られたくないと思うようになって
君に恋に落ちたのだと気づいたんだ。
俺が自分の気持ちに気付いたのは多分あの時一…。
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