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『あのたこ焼き、美味しそう~!』
綿菓子を食べ終えた彼女はタコ焼き屋の前でピタリと立ち止まった。
『侑莉、あんま食べすぎたらおばちゃんに怒られるぞ。』
俺の言葉に侑莉はしゅんとしていた。
『侑莉、俺が買ってやるよ。』
彼女を挟んで反対側にいた拓海君が笑顔で言った。
目の前のタコ焼きは 12個入りで600円。
俺は慌てて自分の財布を開けた。
財布に入っていたのは100円玉が2枚と1円玉が6枚。
到底タコ焼きの600円には どう足掻いても届かない。
こんなことならあのカードゲームのカード我慢すればよかった!なんて財布の中身を見て、3日前の自分に後悔した。
『本当に?陸も食べる?』
200円を握りしめてコクリと頷いた。
拓海君に近づいて 握っていた200円を差し出した。
『ごめん、今200円しか無い。』
『いいって。お前何か好きなの買ってこいよ。』
『……でも…。』
『お前達 そこで待ってろよ!』
そう言い捨ててタコ焼きを買う拓海君の背中は大きくて、一つしか変わらないはずなのに凄くお兄さんに見えた。
そんな拓海君を見ることしか出来なくて いてもたってもいられなくなった。
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