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『陸、朝ご飯食べた?』
『や、食べてない。』
そう言うと『やっぱり』と、溜息混じりに小さな弁当箱を差し出した。
『はい』
『何これ?』
『おにぎり。朝ご飯 食べてないんだろうなーって思ってね。』
俺の為に?
わざわざ?
自然と頬の筋肉が緩むのが分かった。
『毒でも入ってんじゃねぇの?』
嬉しくてたまらないくせに、こういう時に素直に“ありがとう”が言えない自分が嫌いだ。
でも侑莉は そんな俺を分かっていてくれているから
『入ってませんっ!』
て、俺の好きな顔で笑ってくれた。
でも隣にいた拓海君が言った。
『陸、俺も食ったから多分大丈夫。でもさ、しょっぱい部分があんだよ。』
なんだよ…
拓海君にも“おにぎり”作ってあげたんだ。
『そんな事言うんだったらもう拓海には作らないからね!』
頬を膨らます侑莉にじゃれる拓海君が目に入る。
俺だけの為じゃないことに 少し胸が痛んだ。
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