ろすと

1.

額に輝く宝石を見た僕の心を、駆け巡るように、黒い感情が埋め尽くした。

この女が、憎い。

自分と父をこんな体にした、この化け物が。

僕は女のそばから立ち上がると、辺りにライトを照らして見回した。

そして手頃な大きさの石を両手で持ち上げると、少し思案した。

「これで頭を潰せば、この女は死ぬだろうか。」

僕は女のそばに両膝を下ろすと、石を振り上げ、女の額をよく見据えた。

額の石ごと砕いてやろうと、両手を降り下ろそうとした、その時。

昔、父が言っていた言葉が頭の中で響いた。

「人が人を殺した時、そいつは人じゃなくなるんだ。エリア、お前は人でいろよ。」

「く……そぉっ！！」

父の悲しげな瞳を思い出した僕は、両手に持っていた石を放り投げた。

石は音を立てて砕けた。

だが、僕の心は晴れなかった。

炭坑内に、荒い呼吸が響く。

僕は息を整えると、また少し思案した。

「……とりあえず、家に連れていこう。」

自分に言い聞かせるように呟いた僕は、女を腕に担いで歩き出した。