1.

5/5
前へ
/7ページ
次へ
「わかりました。」 僕は少し大きな声で返事をすると、タンスの中を漁り始めた。 さっきおばさんが言っていたように、女は裸である。 僕は女の裸を見るのは始めてだったけれど、別に嬉しくとも何ともなかった。 まあ当たり前だけど。 僕はまず、近くにあった布で女の体を隅々まで拭いた。 身体中に泥やら砂やらがついていたからだ。 吹き終わると、先ほど選んだ服を着せた。 女の服は構造が複雑で、なかなかうまく着せることが出来ない。 なんとか着せ終わった後、僕は異様な疲労感を覚えていた。 「ふう。」 小さくため息をつくと、僕は扉を開け部屋を後にした。 ふと聞こえた女の寝息は、僕のため息よりもか細かった。 「終わりました。」 「お疲れ様。さあ、クリームシチューを召し上がれ!」 「いただきます。」 食事の並べられたテーブルに着くと、スプーンでクリームシチューをすくい、口に入れた。 「どう?」 おばさんが席に着きながら尋ねる。 「美味しいです。」 そう言った僕だが、顔に笑みは浮かばない。 いや、正確には浮かべることが出来ない。 「ならいいわ!」 おばさんは満足そうに微笑むと、クリームシチューの皿を持って立ち上がった。 テーブルを離れると、おばさんの部屋と逆の部屋に入っていった。 「はーい、お待ちかねのご飯よ!」 向かった先は父の部屋だ。      
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加