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ある道を、ある男が一人歩いていた
ある日男はあるモノに言われた
このまま歩きつづければ、君は全てを失うだろう
男はかまわず歩きつづけた
一歩歩くと、口がきけなくなった
ニ歩歩くと、鼻がきかなくなった
三歩歩くと、目が見えなくなった
四歩歩くと、耳が聞こえなくなった
五歩歩くと、何も感じなくなった
六歩歩くと、体が動かなくなった
七歩歩くと、ついに男は地に倒れてしまった
何も聞こえず、何も見えず、何の臭いも無く、何の感触も無い世界で、何も喋れず、何も触れない男はただ考えていた
ただ一歩を
ただ一歩を踏み出すことを
考えて考えて、何もわからなくなった頃、気付けば男は二本の足で立っていた
気付けば暖かい感触を感じていた
気付けば力強い鼓動の音が聞こえていた
気付けば光が満ちていた
気付けば何か良い匂いを感じていた
気付けば言葉が零れていた
「 」
気付けば男はまた歩いていた
その先に何があるかも考えずに
今日も男はただ一歩を刻みつづける
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