🍸ちょっと酔い話🍸

バーボン

さっきから僕は
漂う彼女の香水が
いったい何だったのか
思いだそうとして
思い出せずにいた
人間(ひと)の記憶ほど
あやふやなものはない
まして
男と女の関係なんてものは
なかでもいちばんありそうで
ないものなのだから…
僕はただ
もくもくと飲んだ
またたくまに
ふたりのボトルが
残りわずかになった
まるで
僕の気持ちを見透かしたように
彼女もグラスに
酒(バーボン)を注いだ
この先
離ればなれになるという
ふたりではない
あの女(ひと)にはもう彼がいる
改めて打ち明ける程の
心をもたない 男と女
あるいは
僕が彼女を必要とした様に
彼女が僕を
必要といたのだろうかという
不安がなかったわけではない
いつの頃からか
ただいつでも会えるというだけの
この関係が
この先まだつづけばいいと
思いはじめていた