チンザノ

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……楽しかった想い出だったがいくつもある。 つらくないと言ったら嘘になる。この先なにかにつけて あなたのことを思い出すこともあるだろう。あなたがもう少し嘘の上手な女だったなら 僕とのことも まさかこんな形で終わらなかったように思う。言葉が足りなかったかもしれない。情けない言い訳のように聞こえるかもしれない。ひょっとしてこれが運命だったのかと 今になってやっとそう思えるようにもなった。 あなたが求めたものは 結局 僕という男ではなかった。どうやら男の優しさだったらしい。だから あとになって気が変わらないうちに 手紙の封をしてしまおう。さようなら。
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