🍸ちょっと酔い話🍸

初恋

静けさを引き裂く様に
女の嬌声が続く
彼女が今まで座っていた
カウンターに
紫の煙が残っている
灰皿の横には
ショートピースとライター
彼女の忘れ物だ
今ならまだ
エレベーターホールに
彼女の姿があるはず
今ならまだ間に合う
明日には会えるだろうが
もう一度だけ
彼女の声が聞きたい
店をでようとする僕に
女が聞く
｢あきらぁ どこ行くのぅ⁉｣
｢お客様の忘れ物届けに｣
カラン🎶
ドアがなる
まだ彼女の姿があった
エレベーターの
閉まりかけのドアに
滑り込む
｢どうしたの⁉｣
｢お忘れものですよ｣
｢あら 明日でも よかったのに｣
｢いえ すぐ気付いたので…｣
｢ありがとう｣
くすっ 彼女が笑った
｢あなたには 御礼ばかり言ってる｣
ドアが開く
｢おやすみなさい｣
｢おやすみなさい
明日もお待ちしています｣
ドアが閉まる
彼女の残り香の中
行き先階を押す
上昇するエレベーター
よかった
彼女は笑っていた
これで僕は一日
気持ちよく仕事出来る