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おかしい。
こんな墓場なんかで、常識的に考えてヴァイオリンの音なんか聞こえる訳がない。
まぁ夜に墓場でヴァイオリンを演奏するという素っ頓狂な趣味を持った奴がいたとしたら話は別だが。
「行ってみるか…」
俺は好奇心をそそられ、そのヴァイオリンの音がする方向へ忍び足で向かった。
…この先の広場からだな。
俺は少し大きな木に隠れ、昼間は子供達の遊び場となっている広場の様子を窺う。
そこには、暗闇に隠れてよく見えないが一人の少女が広場の中央でヴァイオリンを演奏しているのが見えた。
女の子…?
だがどっかで見た事あるなぁ…
俺は頭の中の霧がかかった記憶を必死で探り、結局出て来なかったので諦めた。
「それにしても…良い演奏だな。」
俺はその少女の演奏にいつの間にか聴き入ってしまった。
聴いていると心が安らぐ…そんな優しい音色だった。
だが、俺は聴いている内に、徐々に思考が変な方向へ向いてきた。
「俺…今度の個人戦の大会優勝できるかなぁ…」
それは今、全く持って関係のない事だったが、考え始めると止まらなくなってしまう。
「先月の大会も準決勝で敗退したし…
良くてもベスト8。最悪ベスト16にも入れないかもしれない…」
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