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「嗚呼…」
思わず洩れた吐息。果汁に汚れた男の口元は、照らし出す月のように弧を描く。
白銀の光と果実の色に染まった彼の体は、いっそ絵画のような美しさで黄土の画布に横たわっていた。その芸術の中に足を踏み入れ、男はそっと弛緩し投げ出された白い手に触れる。
柔らかく、滑らかな感触。
一体どれ程、この肌に魅せられ、恋い焦がれてきたのか。込み上げた愛しさは、衝動に成り代わる。
誰にも、渡さない。
表面を覆う白は、貪り付いた瞬間に内に秘めたる紅を咲かせる。新雪に足跡を残す子供のように、男は夢中で彼を己の思う色へと染めていった。
やがて紅は、再び狭間から白を覗かせる。彼を形作る最も根本の物であるそれは、男にはどうしようも出来ない程に強固で神聖だった。
「──…やっと、逢えた、」
永劫にも近い時を、待ち続けていた。ずっと、ずっとずっとずっと。
「もうこれで、」
ヒトツダヨ
end
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