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プロローグ
それは、どこの町でも一つくらいは見つけられるような廃屋だった。
まだ日は高々と空の上にあると云うのに、どんよりとした暗い印象があり、廃屋を吹き抜ける風が不気味な音を立る。まるで『こっちへおいで』と言っているようで、前を通る者の足を急がせる。
そんな中、誰も居ないはずの廃屋の窓から外をうかがう白い影が一つ―――
『……帰りを、お帰りをいつまでもお待ちしております』
影が小さく言葉を風に乗せると、年若い青年が一人、ふらりと廃屋へ入って行った。そしてまた影も、すぅっと屋内へと消えていった。
―――いつまでも待っています…一日でも早いお帰りを
いつまでも・・・
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