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月齢まもない今晩
闇夜に混じって
森の奥深く
娘の住む家に化粧品売りがやってきた
化粧品売りは娘に口紅を勧める
蟾蜍の皮の色
蜘蛛の足の色
蝙蝠の唾液色
等々...
「むすめさん、この色など如何?」
ソレはドロドロの紅黒い色
あら
この口紅、とっても冷たい色なのね
むすめは一瞬でその色の虜になり、惹かれてしまった。
「いただくわ」
「お代はタダで結構です…。むすめさん、その口紅を塗って差し上げましょう…」
むすめは化粧品売りに唇を差し出した。
知らぬ間に
外では、雨音。
肉の焼ける音にソックリだった…雨音。
娘の唇の上に綺麗に乗った紅の色と艶は、濃さを増して…
娘の血の気が引いてゆく。
そう
「おぉ美しい。紅がお前の血を吸うて…」
娘の最期の記憶は
木々の
ざわめき声だった。
次に売られるは
『乙女の生き血』
という、洒落た名の色。
それは
『むすめの生き血の色』
このお話は、ここだけの内緒話。
ほら、家の外の木々がざわめき始めてる。
次は……
-完-
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