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「まあまあ、ツバキちゃん、ワガママいわないで」
鷺坂がいっぱいの紙袋を床に下ろして彼女を見上げた。
「じゃあ、二枚たのもう」
五十嵐が切り出して、ツバキと三夜子の顔がほころんだ。
小さな部屋で……二組のカップルが談笑しながら食卓の席につく。五十嵐の隣は三夜子が、鷺坂のそばにはツバキが座り、コーヒーを片手に明るい笑い声を弾ませた。
夜がふけていく――。
きら星がビロードの夜空に散らばり、月齢二十六日の月が漆黒に浮かび上がる――。
部屋のあたたかなあたりとともに、三夜子の笑い声が闇にとけていった。
(#おまけ③おしまい)
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