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四月一日。
その日は一年に一度あるかないかくらいの嵐がその街を襲った。
土砂降りの雨が三日も降り続いた。
電柱にくくりつけられた明かりがある一人の少女をぼんやりと照らしていた。
雨粒が刺さるように降る中、少女は虚ろな眼でそこに立っていた。
髪には水がしたたり、白い服はずぶ濡れ、そのままでは最悪死んでしまっていたかもしれない。
――――それをある教会の神父が見つけなければ。
「君――何してるんだい?」
その神父は穏やかに、雨の音に負けないようはっきりと彼女に問い掛けた。
少女は曇った瞳で神父を見た。
「――別に」
「誰かを待っているのかい?」
神父はさらに問う。
「――『あの谷でもう一度会いましょう』」
そう言うと彼女は崩れるように倒れた。
…………それが二年前の出来事。
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