静かな午後

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      暫く間があり、少年が新しいハーブを広げて作業を始めたあたりで、解らないです、青年は体を小さく縮めて申し訳無さそうに告げた。 「然様ですか」何の感情も無さそうな、事務作業をしている女給のような声音に、青年はぐっと不安になった。青年はこの少年の無感情な声に免疫が無い。 もやもやとした不安感を抱え、拙い答えだったのかと密かに少年の顔を窺い見ると、少年はハーブをいじるのをやめ、微笑んで青年を見ていた。 「然様ですよね、だって、そんなことは私しか知らないのですから」 くすくす。くすくす。乙女の如く笑う少年の首元を絞める金糸雀のリボンタイが風に揺れる。いや、違う。透明な妖精が、タイを解いて彼を困らせようとしているのだ。 少年は気付けど、止めない。変わりに青年が砂糖を混ぜる為の細いスプーンで妖精の頭をこずいた。驚いて辺りを見回す妖精の姿に、自然と頬が緩む。    困らせる人と、困る人。その無限ループに、笑う二人。                  
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