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ある日のこと。
独りのオカリナ吹きが、切り株に座っていました。
彼はいつも同じ切り株に座り、朝から晩までオカリナを吹いています。
彼がオカリナを吹き始めると、一人の人間が傍に座りました。
一曲終わり、オカリナ吹きが一息つくと、人間は手を叩きました。
人間は言いました。
「素敵ですね」
オカリナ吹きは頬を赤らめ、口許を緩めました。
人間は続けます。
「私はここが大好きです」
人間は笑みを浮かべています。
オカリナ吹きは、お礼として特別な曲を吹き始めました。
その曲は、滅多に吹かないものです。彼なりの感謝を表しているのでしょう。
彼も「ここ」が大好きでした。
一通り聞いて、人間は言いました。
「また来ます」
と。
オカリナ吹きは嬉しそうに頷きました。
人間も笑顔を向け、手を振りながら去っていきました。
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