交錯

2/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
 ある日のこと。    独りのオカリナ吹きが、切り株に座っていました。  彼はいつも同じ切り株に座り、朝から晩までオカリナを吹いています。    彼がオカリナを吹き始めると、一人の人間が傍に座りました。  一曲終わり、オカリナ吹きが一息つくと、人間は手を叩きました。  人間は言いました。   「素敵ですね」    オカリナ吹きは頬を赤らめ、口許を緩めました。  人間は続けます。   「私はここが大好きです」    人間は笑みを浮かべています。  オカリナ吹きは、お礼として特別な曲を吹き始めました。  その曲は、滅多に吹かないものです。彼なりの感謝を表しているのでしょう。  彼も「ここ」が大好きでした。      一通り聞いて、人間は言いました。   「また来ます」    と。    オカリナ吹きは嬉しそうに頷きました。  人間も笑顔を向け、手を振りながら去っていきました。    
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!