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「さとみちゃんのせいじゃないわ。仁は本当に好きな子を守ったんだもの。さとみちゃんの気持ちに答えようとして、必ず目を覚ますわ」
「お…おばさん」
仁のお父さん、お母さんは私を責めるわけでもなく、傍にいてくれた。まるで本当のお父さん、お母さんみたいだった。
私はおばさんにしがみつき、泣き続けた。
どれくらい泣いていただろうか…。
気がつくとランプが消えていて、仁が手術室から出て来た。
私は仁の傍にいたくて、意識のない仁と共に病室へと向かった。
私は早く仁の意識が戻るようにと、仁の手を強く握った。
「仁…どうしてこんな事になったの?私のせいだよね。ごめんね…」
消えかかるような声でそれだけ言うと、仁の手を握ったまま寝てしまった。
次に目覚めたのは、翌日だった。
仁が起きるまで寝ないと決めたのに、眠ってしまったらしい。
仁の方を見ると…意識が戻っていた!!
「仁…!!大丈夫?心配したんだよ。私のせいでこんな事になってごめんね。私…仁の意識が戻らないんじゃないかと思って…」
そう心配していた私に、仁の口から意外な言葉が出た。
「ごめん…。君、誰?覚えてないんだ。思いだそうとすると、頭が痛くなるんだ。本当に…ごめん…」
「えっ!!私だよ。さとみ!!付き合ってたんだよ」
「そんな事言われたって、わからねーんだよ!!」
「そ…っか…。じゃあ、しょうがないよね…。ごめんね。こうなったのも私のせいだし…。無理に思い出さなくていいから…。少しずつでいいよ」
私は泣き顔を見せたくなくて、一瞬下を向いた。
でも、すぐに笑顔を仁に向けた。
そして、自己紹介を始めた。
「じゃあ、自己紹介するね。私の名前は藤堂さとみ。私、仁君のこと『仁』って呼ぶね」
「さとみ…さん。よろしく」
努めて明るく言ったけど、少し複雑だった。
仁の意識が戻ったのは嬉しいけど、仁から私の記憶が一切ない…。
これほどショックな事は今までになかった…。
これからどうすればいいの?
仁…私はこれからどうしたらいい?
あの事故があった日から一週間が過ぎた。
仁は事故以前と変わらず、たくさん話しかけてくれた。
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