君が私を忘れても…

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唯一、以前と違うのは呼び捨てで話しかけてくれない事だ。 でも、一緒に笑いあえるだけで幸せだった。 例え、仁の記憶から私がいなくても…。 そんな事を考えていたら、仁が私の席に近づいてきた。 「さとみさん、今日一緒に帰ろうよ」 「うん。いいよ。じゃあ、校門の所で待ってるね」 ーさとみsideー さとみさん…か。 もう前みたいに『さとみ』って言ってくれないんだね…。 なんか…寂しいな…。 放課後、校門で仁が来るのを待っていた。 すると、後ろの方から声がした。 「さとみさん、遅くなってごめん。部活長引いちゃって。本当にごめん」 「いいよ。大丈夫」 「怒ってない?」 「うん。怒ってないよ」 「良かった。じゃあ帰ろうか」 「うん」 「俺、本当に何も覚えてなくてごめんね」 「ううん。そんな事気にしなくていいよ。全然大丈夫。それより、こうして仁と一緒に帰るの久しぶりだな。何日ぶりだろう。って言っても、覚えてないか…。ごめんね…」 そんな会話から始まって、お互いの家につくまでいろんな事を話した。 前みたいに楽しく帰れて嬉しかった。 だけど…何か足りない。 胸の奥にある空間に何かが…。 それを埋める物はない。 あるとすれば、仁が前のように、記憶をなくす前に戻ってくれる事だ。 それから二人はお互いの家に戻った。 戻るといっても、家は隣だからいつでも話せる。 もちろん、お互いの部屋のベランダが近いから、一応隣どうしになる。 自分の部屋にこもって、仁と一緒に映っている写真を見ていた。 コツッ!!コツッ!! 窓をたたく音がして、急いで窓を開けた。 仁が手招きしていた。 「さとみさん、上見て!!すげー綺麗だから」 そう言われて私は空を見た。 あまりの綺麗さに私は声を漏らした。 「うわーすごく綺麗。何かダイヤモンドみたいだね」 「うん。さとみさん、俺のせいで元気ないから、これ見せたかったんだ。これ見たら元気出るかなぁって思ってさ」 「ありがとう」 .
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