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そんなこんなで、そのまま歩いていくと大きな屋敷が見えてきた。
その屋敷が“鈴蘭”だ。
門をくぐれば、石庭が広がり、入口へは木の橋が掛かっている。
その橋を2人並んで歩く。
水のせせらぎも聞こえ、何とも古風な雰囲気だ。
「うわ~。噂には聞いてたんですがやっぱり大きいですね。」
「中はとても広いんですよ。」
石庭を見渡しながらいくつかの橋を渡り終わると店の入口に着いた。
すると、入口の奥から女将が現れ、深く一礼する。
「いらっしゃいませ。はたけ様。お待ちしておりました。」
「お久しぶりです。」
「ご案内致します。どうぞ、こちらへ。」
女将に案内されるまま、忘年会が行われているのだろう。がやがやしている部屋を横目に、渡り廊下を通り奥の部屋へと連れられた。
「こちらでございます。」
「どうも。…じゃあ頼んでおいたヤツでお願い。」
「かしこまりました。ごゆっくりどうぞ。」
女将は一連の動作で襖を閉め、戻っていった。
「カカシさん、『頼んでおいた』って…?」
俺達は向き合うように座りベストを脱ぎ、俺は不思議に思ったことをカカシさんに問いた。
すると彼は、いつの間にか口布を外していて、ニコニコしながら答えた。
「実はですね、予約してたんですよ。ギリギリまで秘密にしておきたかったんです。」
「じゃあ、あの時、『鍋が食べたい』って…」
「そ。ノってくれるかなー、ノってほしいなーって。だから、鍋の名前を出したとき『嫌だ~』なんてて言われたらどうしようかと思いました。」
まんまとカカシの思惑に、はまってしまったが、イルカはとても嬉しかった。
「ありがとうございます。…へへっ」
イルカは頬をほんのり赤く染め笑った。
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